【九州大学】腸内環境の改善に“食”と“温泉”の力(論文掲載・発表日:2025年6⽉30日)

#腸内細菌

本研究は、腸内マイクロバイオームの形成における食事要因(ヨーグルト摂取)と環境要因(塩素温泉入浴)の個別の影響および複合的な効果を、健康な成人を対象としたランダム化比較試験(RCT)により検証することを目的としている。
### 1. 研究の背景・動機・目的
ヨーグルトはプロバイオティクス源として広く知られ、腸内環境への有益な効果が報告されている。一方、温泉入浴が腸内環境に与える影響は科学的に未解明であった。本研究では、食事要因と環境要因が腸の健康に及ぼす影響を分離して評価し、両者の相互作用を明らかにすることを動機とした。
### 2. 研究手法・実験設計・データ収集方法
ヨーグルト非摂取の健康な成人39名(最終解析n=35)を対象に、**コントロール群**、**ヨーグルト群**(毎日180g摂取)、**ヨーグルト+温泉群**(毎日ヨーグルト摂取+2日に1回以上の塩素温泉入浴)の3群に無作為に割り付け、4週間の介入を行った。腸内細菌叢は**16S rRNA遺伝子シーケンシング**により分析し、代謝物は**GC-MSによる短鎖脂肪酸(SCFA)測定**により評価した。排便機能は14項目の質問票で評価された。
### 3. 主要な結果・発見・数値データ
ヨーグルト摂取は腸内細菌叢の多様性を有意に向上させた。具体的には、ヨーグルト群においてShannon指数(p=0.0031)、観測ASV数(p=0.0007)、Faith's PD(p=0.0001)が統計的に有意に増加した。細菌組成においては、腸管バリア機能や代謝改善と関連する*Akkermansia*の相対存在量が有意に増加したほか、*Sellimonas*や*Eggerthella*など複数の有益な属が増加した。代謝物に関しては、ヨーグルト群でギ酸の減少傾向が見られたものの、SCFAプロファイル全体に有意な変化はなかった。ヨーグルト+温泉群では、微生物叢や代謝物に有意な変化は検出されなかった。排便機能に関しては、両介入群で改善傾向が見られ、特にヨーグルト+温泉群が最も大きな数値的改善を示したが、統計的有意差には至らなかった。
### 4. 考察・議論・含意
ヨーグルトは微生物多様性の向上と有益菌の増加を通じて腸内環境を調節する一方、温泉入浴は微生物学的変化を伴わず、リラクゼーションや自律神経調節といった非微生物的経路を通じて排便機能に寄与している可能性が示唆された。両介入は相補的かつ独立したメカニズムで機能していると考えられ、食事と環境要因を組み合わせた包括的な腸活プログラムの開発が期待される。
### 5. 結論・今後の研究方向性
本研究により、ヨーグルト摂取は腸内環境の質的改善に寄与し、温泉入浴は排便機能の改善傾向をもたらすことが示唆された。今後は、より大規模なコホートでの検証や、免疫プロファイルなどの機能マーカーの評価を通じて、具体的な健康効果のメカニズム解明が求められる。
### 6. 論文の学術的・実践的意義
本研究は、食事要因と環境要因が腸の健康に及ぼす影響を分離して評価した点に学術的意義がある。実践的には、ヨーグルト摂取や温泉利用といったアクセスしやすいライフスタイル介入が、全体的なウェルビーイングを促進する実用的な戦略となり得ることを示しており、**ヘルスツーリズムや食品産業における健康サービス開発**に貢献する。

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論文内容(テキスト)